虫歯で抜歯が必要なのはどんなとき?抜歯のリスクと歯を残す治療
「虫歯で抜歯が必要と言われた」「本当に抜くしかないのかを知りたい」――こうしたご相談は少なくありません。
虫歯で抜歯が検討されるのは、歯の頭の部分(歯冠)が大きく崩れて元の形に戻すことが難しい場合や、歯の根の先(根尖部)の感染・炎症が治療によっても改善しない場合など、治療をしても歯を残すことが難しいと判断されるケースです。
ただし、見た目やレントゲン所見だけで一律に決まるわけではありません。
本記事では、抜歯が検討されるケースから、歯を残せる可能性、抜歯の流れ、抜歯後のケアまでを解説します。
目次
虫歯で抜歯が検討されるのはどんなとき?
虫歯が深いという理由だけで抜歯が決まるわけではありません。残っている健康な歯の部分の量、歯の根が割れていないか、歯ぐきや歯を支える骨の状態、根の治療(根管治療)などで歯を残せる見込みを総合的に判断します。
虫歯で抜歯が検討される主なケース
次のような状態がある場合には、抜歯が選択肢となることがあります。
- 歯の根だけが残った状態など、残っている健康な歯の部分が少なく、被せ物などで元の形に戻すことが難しい場合
- 歯の根が折れている、または縦に大きく割れている(垂直性歯根破折など)
- 過去に根管治療を受けた歯で再感染や歯の根の先の炎症がみられ、治療をやり直しても歯を残すことが難しい場合
根が縦に大きく割れるのは、過去に根の治療を受けた歯や大きな詰め物・被せ物がある歯に起こりやすいとされます。歯を残すことが難しく抜歯が検討されることが多いですが、割れた範囲によっては歯の一部を残せる場合もあります。
なお、進行した歯周病や、親知らずの周りの炎症を繰り返す場合など、虫歯以外にも抜歯の理由になる状態があります。
虫歯の進行段階(CO〜C4)と抜歯の関係
日本の歯科では、虫歯の進行度を「CO〜C4」の5段階で示す表記が用いられることがあります。患者さんへの説明に使われる目安であり、実際の判断は残っている歯の状態や虫歯の進み具合などを総合的にみて行います。
| 進行段階 | 状態 | 主な対応 |
|---|---|---|
| CO | ごく初期の虫歯。エナメル質が脱灰し始めた状態(まだ穴は空いていない) | フッ素配合の歯磨き粉などで再石灰化を促し、経過観察とする場合がある |
| C1 | エナメル質に限局した虫歯 | 状態に応じて詰め物などの修復治療を検討 |
| C2 | 象牙質にまで進行した虫歯 | 詰め物や被せ物で対応するなど、状態に応じた修復治療 |
| C3 | 歯髄(神経)にまで進行した虫歯 | 歯髄の状態に応じて、歯髄を残す治療(生活歯髄療法)や根管治療などを検討 |
| C4 | 一般向けには、歯冠が大きく崩壊した残根状態などと説明されることがある | 歯の状態を詳しく評価し、保存可能性または抜歯を検討 |
抜歯の前に、歯を残せる可能性を検討する
「抜歯が必要」と言われた場合でも、状態によっては歯を残せる可能性があります。
まず確認したいのは元の形に戻せるかどうかで、虫歯を取り除いたあとに詰め物や被せ物を支えるだけの健康な歯の部分が残るかが大切です。
歯の神経まで虫歯が進行している(C3)場合でも、神経の状態によっては、神経を残す治療や根管治療で歯を残せる可能性があります。当院の対応は根管治療の診療案内、神経を残せる可能性がある場合の治療はMTAセメントを用いた歯髄保存療法もあわせてご覧ください。
過去に根の治療を受けた歯で症状が再発している場合は治療のやり直しが検討され、それでも改善しないときでも、歯ぐきの側から歯の根の先の病巣を取り除く処置(歯根端切除術)で歯を残せることがあります。(必ずしも全て症例に対応しているわけではないので主治医にご確認ください) 判断に迷う場合は根管治療ではなく抜歯と言われたら?判断基準と考え方もあわせてご覧ください。
歯を残す選択肢を広げるには、抜歯が検討されるほど進行する前に虫歯を見つけて対応することが大切です。フッ化物配合歯磨剤を用いた毎日のセルフケアと定期検診を基本に、虫歯は自分でわかる?や虫歯は自然に治る?もあわせてご確認ください。
抜歯のリスクと、抜かずに放置するリスク
抜歯を検討する際は、抜歯に伴うリスクと、放置するリスクの両方を理解しておくことが大切です。
抜歯に伴う主なリスク
抜歯は日常的な歯科処置ですが、次のようなリスクや注意点があります。
- 抜歯後の出血、腫れ、痛み、一時的に噛みにくくなること
- 下あごの親知らずでは、下あごの中を通る神経や舌の神経との位置関係により、下唇や舌に感覚異常が生じる可能性
- 上あごの奥歯では、歯の根と鼻の横にある空洞(上顎洞)の位置関係により、口の中とその空洞がつながる可能性
- 抜歯した部分の血のかたまりが失われるなどして骨がむき出しになり、強い痛みを生じるドライソケット
- 感染や二次的な炎症
- 体の病気や服用中のお薬によっては、抜歯前に主治医との連携が必要となる場合
麻酔については、高血圧・心臓の病気などがある方は事前に歯科医師にお伝えください。
抜歯が必要な状態を放置するリスク
長期間放置した場合、次のような影響が生じる可能性があります。
- まれに感染が周囲へ広がり、蜂窩織炎やあごの骨の感染、上顎洞の炎症につながる可能性
- 感染や炎症による強い痛み、腫れの拡大
- 感染や進行した歯周病により、歯を支える骨が失われる可能性
- 痛みや歯の機能低下により、食事内容に影響する場合がある
放置による全身への影響は虫歯を放置するとどうなる?、腫れ・膿を伴う場合の受診の目安は虫歯で顔や歯ぐきが腫れるもあわせてご覧ください。
抜歯後、歯がない状態を長期間放置するリスク
抜歯した部分をそのままにした場合にも、別のリスクがあります。
- 隣の歯が抜歯した側へ傾いてくることがある
- 噛み合う相手の歯が伸び出してくることがある
- 欠損部位や本数によっては、噛み合わせや発音への影響
- 抜歯した部分の歯を支える骨がやせて、将来歯を補う治療の選択肢に影響する可能性
抜歯の流れ
抜歯は事前の検査・診断から処置後の経過観察まで一連の流れで進み、実際の内容は歯の位置や状態、体調によって異なります。
お口の中を詳しく診察してレントゲン検査を行い、必要に応じてCT検査で歯の根や周囲の骨、上顎洞、下あごの中を通る神経などの位置関係を調べます。あわせて、全身の健康状態や服用中のお薬、これまでの病気も確認します。
血液をサラサラにする薬(抗血小板薬・抗凝固薬)や骨粗しょう症の薬(骨吸収抑制薬)を使用中の方は、自己判断で薬をやめず、必ず歯科医師にお伝えください。必要に応じて処方医と連携します。
当日は局所麻酔が十分に効いていることを確認したうえで処置を行い、歯の状態によっては歯ぐきの切開や骨を削る処置、歯の分割が必要になる場合があります。処置後は止血を確認して注意事項や処方薬について説明し、体に溶けない糸で縫合した場合は抜糸のために来院いただくのが一般的です。
抜歯後の注意点(時系列)
抜歯後のケアは、時期によって注意点が変わります。
直後〜当日
- 止血:渡されたガーゼをしっかり噛んで5分〜10分程度圧迫します。強い出血が続く場合は歯科医院にご連絡ください
- 血のかたまり(血餅)を守る:抜歯した部分にできる血のかたまりは、傷を守り治りを助けます。抜歯後24時間程度は、強いうがいや吸う動作、ストローの使用などかたまりがはがれる行為を避け、舌や指で患部に触れないようにしてください
- 飲食:麻酔が効いている間は感覚が鈍っているため、飲食、特に熱いものは控え、麻酔が切れた後も患部と反対側で柔らかいものから食べてください
- 激しい運動・入浴・飲酒を避ける:血流が増えると再出血や腫れの悪化につながる可能性があるため、当日はシャワー程度にとどめてください
翌日〜2・3日目
- 腫れ:処置後2〜3日程度に強くなることが多く、その後徐々に軽減していきます
- 歯みがき:抜歯した部分を避けて他の歯は通常通り優しく磨き、うがいは強くゆすがず口に含んで軽く出す程度にしてください
- 喫煙:治りを遅らせる、ドライソケットのリスクを高めるなどの影響が知られており、少なくとも数日は控えることをおすすめします
1週間ほど
- 抜糸と治り方:体に溶けない糸で縫合した場合は1週間前後を目安に抜糸のため来院いただきます(溶ける糸では不要な場合があります)。痛みや腫れは徐々に軽くなりますが骨が治るまでには数か月かかるため、次の治療のタイミングは歯科医師にご相談ください
こんな症状は歯科医院へご相談ください
抜歯後の経過で次のような症状がある場合は、抜歯を受けた歯科医院にできるだけ早くご連絡ください。
- 抜歯後3〜4日目以降に、逆に痛みが強くなる(ドライソケットのサインの可能性があります)
- ガーゼを噛んで圧迫しても出血が止まらない、あるいは大量の出血が続く
- 発熱を伴う、患部や周囲の腫れが増していく、悪化する
- 患部から膿や強い悪臭がある
- しびれが長く続く、範囲が広い
顔面の腫れが急速に広がる、首や目の周囲まで腫れる、腫れとともに口が著しく開けにくくなる、飲み込みにくい、呼吸がしづらいといった症状がある場合は、速やかに救急医療機関を受診してください。意識障害や呼吸困難がある場合は、119番通報してください。
抜歯後に歯を補う2つの選択肢
抜歯後に歯を補う当院の方法は、インプラント・入れ歯の2つです。
インプラントはあごの骨に人工の歯の根(インプラント体)を埋め込む方法で、周囲の歯を削らずに補える一方、外科手術が必要で原則として自費診療です。また、骨の溶け方によっては骨造成の処置が必要になる場合もございます。
入れ歯は取り外し式で削る量が少なく保険適用のものがある一方、清掃の手間や慣れるまでの違和感があります。
抜歯した歯の位置、お口の中や全身の状態に応じて選択します。必ずしも歯を補う治療を行わず経過を見る場合もあるため、詳しい比較はインプラント・ブリッジ・入れ歯の比較もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 抜歯のときの痛みはどの程度ですか?
抜歯の際は局所麻酔を行うため、処置中の痛みは軽減されます。麻酔が切れると痛みが出ることがありますが、処方された鎮痛薬で対応できることが多く、数日たって痛みが増してくる場合は歯科医院にご連絡ください。
Q2. 妊娠中や授乳中でも抜歯できますか?
妊娠中でも、必要性がある抜歯は行うことができます。ただし妊娠の時期や体調、使用するお薬への配慮が必要なため、妊娠週数や体調を必ず歯科医師にお伝えいただき、授乳中の方もお薬の選択について事前にご相談ください。
Q3. 抜歯後にドライソケットを予防するには、どうすればいいですか?
ドライソケットは、抜歯した部分の血のかたまりが失われるなどして骨がむき出しになり、強い痛みを生じる状態です。血のかたまりを守るため、強いうがいや吸う動作、患部への刺激を避け、飲酒や激しい運動、喫煙も控えてください。抜歯後3〜4日目以降に痛みが強くなる場合は、歯科医院にご相談ください。
Q4. C4の虫歯は必ず抜歯になりますか?
C4という表記の使われ方には違いがあるため、実際に抜くかどうかは、残っている歯の根の状態、割れていないか、周囲の骨の状態などを調べて総合的に判断します。根管治療と土台・被せ物で元の形に戻して歯を残せる可能性もあるため、判断に迷う場合は歯を残すか抜くかの判断についてもあわせてご覧ください。
湘南ライフ歯科藤沢の対応
湘南ライフ歯科藤沢では、お口の中を詳しく診察したうえで、レントゲン撮影や必要に応じたCT撮影で歯の根や周囲の骨との位置関係を確認し、可能な限り歯を残す選択肢を優先して抜くかどうかを判断します。
歯科口腔外科の診療にも対応しています。「抜歯が必要と言われたが判断に迷う」「抜歯後の過ごし方が不安」といった段階でも、まずはご相談ください。
このコラムの監修者



小林 浩
Hiroshi Kobayashi
所属学会
| 日本口腔外科学会 |
| 日本口腔インプラント学会 |
認定・資格
| 歯学博士(口腔外科学専攻) |
| 日本口腔外科学会認定医 |
| 厚生労働省 歯科医師臨床研修指導医 |
| アメリカ心臓協会(AHA) BLSヘルスプロバイダー |