歯ぐきから膿が出る原因と対処法|潰すのはNG・受診の緊急度を解説
「歯磨きしていたら歯ぐきから膿が出た」「歯ぐきに白い袋のようなものがあり、押すと膿が出てくる」――結論からお伝えすると、こうしたときに歯ぐきの膿を自分で潰そうとしないでください。無理に潰そうとすると患部を傷つけたり、感染や炎症を悪化させたりするおそれがあります。
膿は、歯や歯ぐき、親知らず・インプラントの周囲で起きている感染や炎症のサインです。
なお、痛みが中心で膿を伴わない場合は歯ぐきが痛い7つの原因、顔や歯ぐきが強く腫れている場合は虫歯で顔や歯ぐきが腫れた時の判断基準もあわせてご覧ください。
目次
歯ぐきから膿が出たときの受診の緊急度
一緒に出ている症状によって受診のタイミングが変わります。
緊急(すぐに医療機関へ)
- 呼吸が苦しい、飲み込みづらい
- 首まで腫れが広がっている、または目の周囲まで腫れている
- 腫れが急速に拡大している
- 口がほとんど開かない、または急に開けにくくなっている(発熱や強い倦怠感を伴う場合は特に危険です)
感染が深部に広がっている可能性があるため、歯科医院の診療開始を待たず、速やかに救急医療機関を受診してください。
緊急度・高(できるだけ早く歯科受診)
- 顔が明らかに腫れている
- 発熱や強い倦怠感がある
- 強い痛みが続いている
- 腫れや膿が出ること(排膿)が増えている
- 口を大きく開けると痛む、少し開けにくい
可能であれば当日中を目安に歯科医院へご相談ください(診療時間外であれば、休日・夜間救急歯科の利用も検討してください)。
緊急度・中(早めに歯科受診)
- 自然に膿が出る、または歯ぐきから膿が繰り返し出る
- 歯ぐきに白いふくらみ(フィステル)が繰り返しできる
- 噛むと痛みや違和感がある
- 軽い腫れが続いている
膿が出ている状態は原因となる炎症が続いているサインのため、痛みや腫れが強くなくても早めに歯科医院を受診してください。
症状が軽くても早めに歯科受診
- 一時的に少量の膿が出たが、その後は出ていない
- 歯磨きのときだけ膿らしきものが混じった
一度だけでも明らかな膿が確認された場合は内部で炎症が続いている可能性があるため、歯科医院で原因を確認してもらいましょう。
なぜ歯ぐきから膿が出るのか
膿の溜まり場所(膿瘍)と出口(フィステル)
歯や歯ぐきの内部で細菌感染が起こり、組織内の一か所に膿がたまった状態を「膿瘍(のうよう)」と呼びます。歯ぐきの中や歯の根の先など目に見えない場所にでき、押すと痛みや違和感を感じることがあります。
この膿が歯ぐきの表面へ排出される通路は、日本の歯科では慣用的に「フィステル」と呼ばれることがあります。正式には瘻孔(ろうこう)と呼ばれます。見た目はニキビやおできに似た白または赤い小さなふくらみですが、すべてがフィステルとは限らないため、見た目だけで判断せず歯科医院で確認してもらいましょう。
膿が排出されて内部の圧が下がった場合や、感染の慢性化・神経の壊死により、痛みがないまま膿が出るケースもあります。痛みがない=治癒したとは限らず、原因が残っていると再び膿や腫れが生じることがあります。
歯ぐきから膿が出る主な原因
原因によって必要な治療は異なります。
①歯周炎・歯周膿瘍
歯周病が進行すると歯と歯ぐきの間に深い歯周ポケットができ、そこに膿がたまる「歯周膿瘍」が生じ、歯ぐきから膿が出ることがあります。自然に原因が解消することは期待できず、歯科医院での歯周治療(歯石除去・歯周ポケットの清掃など)が必要です。
詳しくは歯周病治療のご案内もあわせてご覧ください。
②根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん・歯の根の先の炎症)
虫歯などで歯の神経が感染・壊死した歯や、過去に根管治療を受けた歯で再感染が起きた場合に、感染が歯の根の先の周囲へ及ぶことがあります。そこで膿瘍が形成されると、膿が歯ぐき側へ排出されます。歯を保存できる場合は根管治療を、難しい場合は抜歯を検討します。
詳しくは根管治療のご案内もあわせてご覧ください。
③歯根破折(歯の根の割れ・ひび)
過去に根管治療を受けた歯や大きな修復がある歯では、歯ぎしり・食いしばりなどの負荷で根に割れやひびが生じ、破折部から細菌が入り込んで膿が出ることがあります。レントゲンだけでは確認しにくく、歯周ポケット検査やCT撮影が必要になることもあります。
④智歯周囲炎(親知らずの周囲の炎症)
親知らずが斜めや横に生えていたり清掃が難しい状態で残っていたりすると、周囲に汚れが溜まって炎症を起こします。膿が出る・口が開けにくくなる・発熱するといった症状が現れることがあります。炎症を繰り返す場合は、急性症状が落ち着いた後に抜歯を検討します。
⑤インプラント周囲炎(インプラント治療を受けた方の場合)
インプラント周囲の粘膜に炎症が起こり、支える骨が溶けていく状態で、進行すると赤み・腫れ・出血・膿といった症状がみられることがあります。
詳しくはインプラント周囲炎とは?症状や原因、治療法について解説もあわせてご覧ください。
⑥過去の抜歯部位や残った歯の根の炎症
過去の抜歯後に歯根の一部や病変が残っている場合など、抜歯した部位の周囲で炎症が起きて膿が出ることがあり、繰り返す場合は残った歯の根の除去や周辺組織の処置を検討します。
歯ぐきの痛みがある場合は歯ぐきが痛い7つの原因を、顔や歯ぐきの腫れがある場合は虫歯で顔や歯ぐきが腫れた時の判断基準もあわせてご覧ください。
膿を放置するとどうなるか
膿が出ている状態は、原因となる感染や炎症が続いているサインです。放置しても原因は解消せず、膿や腫れを繰り返したり炎症が周囲へ及んだりするおそれがあります。まれに顎や首の深い部分にまで広がり、重い感染症につながることも報告されています。
「痛みがないから」と様子を見ず、早めに歯科医院で原因を確認してもらいましょう。
虫歯を放置した場合の影響については、虫歯を放置するとどうなる?進行の目安と歯科受診すべき7つのサインもあわせてご覧ください。
自分で潰すのはNG:やってはいけないこと
対処を誤ると症状が悪化することがあるため、以下は避けてください。
- フィステルや腫れを自分で潰す:患部を傷つけたり、感染や炎症を悪化させたりするおそれがあります
- 強く押して膿を出そうとする:一時的に楽になっても原因は解決しません
- 患部を舌や指で頻繁に触る:刺激したり傷つけたりする可能性があります
- 腫れている部分を温める:痛みや腫れが強く感じられることがあります
- 自己判断で抗菌薬を服用する:適切な治療を妨げることがあります
受診までにできる応急処置
歯科医院に行くまでの一時的な対処法です(根本的な治療には歯科受診が必要です)。
口の中を清潔に保つ
食後はぬるま湯で軽くうがいをし、歯磨きは毛先のやわらかい歯ブラシで患部を強くこすらないよう注意してください。アルコール成分を含むマウスウォッシュは、しみる場合は控えてください。
患部を冷やす(熱っぽさや腫れがある場合)
腫れや熱っぽさがある場合は、頬の外側から、水道水程度の冷たさで濡らしたタオルを軽く当てると、症状が和らぐことがあります。氷や保冷剤による強い冷却は、かえって治りを悪くするおそれがあるため避けてください。
参考:日本口腔外科学会 口腔外科相談室「あごや頬がはれてきた」
氷を口の中に入れて冷やすことも、組織を傷める可能性があるため避けてください。
市販の鎮痛剤を使う
痛みが強い場合、市販の鎮痛剤(イブプロフェンやアセトアミノフェンなど)で一時的に痛みを和らげることができます。用法・用量を守ってください。
妊娠中・授乳中の方、持病や常用薬のある方は、自己判断で選ばず医師・薬剤師にご相談ください。痛みや腫れが続く・悪化する・繰り返す場合は、歯科医院を受診してください。
歯科医院での治療の流れ
歯科医院では、まず視診・触診と、症状に応じたレントゲン撮影・歯周ポケット検査・CT撮影などで膿の原因を特定し、原因に応じて治療方針を決めます。
| 原因 | 主な治療内容 |
|---|---|
| 歯周炎・歯周膿瘍 | 歯石除去・歯周ポケットの清掃、膿瘍がある場合は必要に応じて膿を出す処置、進行度に応じた歯周治療 |
| 根尖性歯周炎 | 歯を保存できる場合は根管治療(再根管治療含む)、改善しない場合は根の先を取り除く外科的処置(歯根端切除術)、保存が難しい場合は抜歯を検討 |
| 歯根破折 | 破折の位置・範囲・歯の状態によって、抜歯や破折した根の一部を除去する処置などを検討 |
| 親知らずの周りの炎症 | 洗浄・炎症を抑える処置、必要に応じて抗菌薬や鎮痛薬を使用。炎症を繰り返す場合は親知らずの抜歯を検討 |
| インプラント周囲炎 | インプラント周囲の清掃・洗浄、進行度に応じて外科的処置やインプラント除去を検討 |
| 抜歯部位・残った歯の根の炎症 | 残った歯の根の除去や炎症部位の清掃 |
膿を出す必要がある場合は、麻酔をして歯ぐきを小さく切開し膿を排出する処置(切開排膿)を行うことがあります。感染が広がっている場合や全身症状を伴う場合は、抗菌薬による治療が必要になることもあります。
再発を防ぐ予防ケア
再発予防は原因によって異なりますが、虫歯・歯周病を防ぐセルフケアが基本です。
- 1日2回以上の丁寧なブラッシング(やわらかめの歯ブラシで、歯と歯ぐきの境目を意識して)
- デンタルフロス・歯間ブラシで歯と歯の間を清掃
- フッ素配合の歯磨き粉の使用
あわせて、定期検診で歯石除去(スケーリング)やブラッシング指導を受け、親知らず・過去に根管治療を受けた歯・インプラントの状態も確認してもらいましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. フィステル(歯ぐきの白いふくらみ)は自然に治りますか?
フィステルは一時的に小さくなったり見えなくなったりすることがありますが、感染や炎症が治ったとは限りません。再び膿や腫れが生じることもあるため、歯科医院で原因を確認し、必要な治療を受けましょう。
Q2. 抗菌薬を飲めば膿は治まりますか?
抗菌薬で一時的に炎症を抑えられることはありますが、感染源が残っていると症状が再発することがあります。歯の感染症では根管治療・膿を出す処置・抜歯など原因に応じた歯科処置が治療の中心で、抗菌薬の要否は歯科医師の診断によります。
Q3. 妊娠中に歯ぐきから膿が出ました。どうすればいいですか?
妊娠中はホルモンバランスの変化などで歯ぐきに炎症が起こりやすくなりますが、膿が出ている場合は炎症が進行している可能性があります。自然に治まるのを待たず、妊娠週数や体調を伝えたうえで歯科医院を受診してください。
湘南ライフ歯科藤沢の対応
湘南ライフ歯科藤沢では、原因を確かめたうえで、歯周治療・根管治療・切開して膿を出す処置・抜歯、インプラント周囲炎の治療まで一貫してご対応しております。「膿が出たけれど痛みはない」といった段階でも、まずはご相談ください。
このコラムの監修者



小林 浩
Hiroshi Kobayashi
所属学会
| 日本口腔外科学会 |
| 日本口腔インプラント学会 |
認定・資格
| 歯学博士(口腔外科学専攻) |
| 日本口腔外科学会認定医 |
| 厚生労働省 歯科医師臨床研修指導医 |
| アメリカ心臓協会(AHA) BLSヘルスプロバイダー |