虫歯で頭痛や吐き気は起こる?歯が原因か見分ける方法と受診目安
「歯が痛むと同時に頭も痛い」「奥歯の虫歯を放置していたら頭痛が続くようになった」「頭痛外来では異常なしと言われた。虫歯のせい?」
こうしたとき、虫歯と頭痛の関係が気になる方は多いはずです。虫歯が頭痛の原因になることはありますが、そのケースは限られています。頭痛には片頭痛や緊張型頭痛など、虫歯とは異なる仕組みで起こるものも多く、なかには速やかに医療機関の受診が必要な症状も含まれます。
目次
虫歯が頭痛を引き起こす主な仕組み
虫歯が頭痛の原因となる場合、代表的な仕組みは次の2つです。
①歯髄・根尖部の炎症による関連痛
虫歯が深く進行して、歯の内側にある神経や血管(歯髄)に炎症が及ぶと歯髄炎が起こり、感染が歯の根の先(根尖)まで広がると根尖周囲にも炎症が生じます。
これらの痛みが、周辺の神経を通じて頭部の広い範囲に感じられることを「関連痛」と呼びます。歯の痛みが、こめかみや側頭部に広がって感じられることがあります。
②歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)
上の奥歯の虫歯などから歯の神経が死んでしまったり(壊死)、根尖部の感染が生じたりして、その感染が上顎洞(じょうがくどう。鼻の両わき、目の下にある上あごの骨の中の空洞)に広がることがあり、これを「歯性上顎洞炎」と呼びます。
原因となった歯と同じ側の、頬の奥や目の下に痛みや圧迫感を感じるケースがあります。鼻づまり、粘り気のある鼻水、嫌なにおい、顔面の圧迫感などを伴うこともあります。
なお、歯が原因となる頭痛は虫歯だけでなく、歯周組織の感染や親知らず周囲の炎症などでも起こりますが、本記事では虫歯との関係を中心に解説します。あわせて虫歯を放置するとどうなる?もご覧ください。
虫歯の頭痛と間違いやすい他の原因
虫歯と頭痛が同時にあっても、虫歯が原因とは限りません。次の頭痛は虫歯とは異なる仕組みで起こるため、見分ける必要があります。
片頭痛・緊張型頭痛
片頭痛は、ズキンズキンと脈打つような痛みが4時間から72時間ほど続くタイプの頭痛です。片側に起こることが多いものの両側に起こる方も少なくなく、光や音への過敏や吐き気を伴うこともあります。
一方、緊張型頭痛は両側性の締めつけられるような痛みが典型的で、いずれも虫歯治療の対象ではありません。
顎関節症(がくかんせつしょう)
虫歯が顎関節症の直接の原因になるかについてのエビデンスは十分ではありませんが、顎関節や噛むときに使う筋肉(咀嚼筋)の症状でこめかみ・側頭部が痛み、虫歯由来の頭痛と間違われることがあります。
噛むと顎が痛い、口が開けにくい、顎を動かすと痛みを伴う音がするといった症状を伴う場合は、顎関節症の可能性があります。あわせて顎関節症は何科?もご覧ください。
副鼻腔炎
風邪などをきっかけとする副鼻腔炎でも、頬の奥や前頭部に頭痛や圧迫感が生じることがあります。鼻づまりや鼻水を伴う場合は、耳鼻咽喉科での受診をご検討ください。
歯が原因の可能性を考える手がかり
次の症状は歯が頭痛に関わっている可能性の手がかりになりますが、原因の特定には歯科医院での検査が必要です。
- 頭痛と同じ側に、歯の痛み・冷温刺激でしみる症状・噛んだときの痛みがある
- 治療していない虫歯や、詰め物・被せ物の周りに違和感がある
- 頬の奥や目の下に圧迫感があり、鼻づまり・鼻水を伴う(歯性上顎洞炎の可能性)
- 頭痛と歯の症状が連動して強くなったり弱くなったりする
一方、次の症状では虫歯以外の原因も考えられます。
- 拍動する片側の頭痛と、光や音への過敏(片頭痛の可能性)
- 締めつけられるような両側性の頭痛(緊張型頭痛の可能性)
- 発熱・鼻づまり・鼻水とともに生じる頭痛(副鼻腔炎の可能性。歯性上顎洞炎でも鼻症状が出ることがあります)
歯科と医療機関、どちらを受診すべきか
歯科医院の受診をおすすめするケース
- 頭痛と同じ側に、歯の痛み・しみる症状・噛んだときの痛みがある
- 噛むと頭痛が悪化する
- 虫歯が見える、または歯科医院で虫歯を指摘されている
- 顎の周りに痛みや違和感がある
歯や顎が頭痛に関わっている可能性があるため、歯科医院での検査をおすすめします。
医療機関(内科・脳神経内科・脳神経外科など)の受診を優先すべきケース
- 突然の激しい頭痛(これまで経験したことがない)
- 発熱や首の硬直、意識障害、麻痺・しびれ、ろれつが回らない、視野が欠ける・物が二重に見えるといった症状を伴う
- 頭部を強く打った後の頭痛悪化
- 妊娠中の激しい頭痛
これらは命に関わる病気が原因の可能性があるため、様子を見ずに速やかに救急医療機関を受診してください。
また、上記に当てはまらなくても、歯の症状を伴わない頭痛が続いている場合は、内科・脳神経内科・頭痛外来など、頭痛を診る医療機関の受診をご検討ください。
判断に迷う場合
頭痛外来のあるクリニックやかかりつけの内科でまず相談し、必要に応じて歯科への紹介を受ける方法もあります。複数の原因が重なる場合にも対応しやすくなります。
受診までにできる応急処置
あくまで応急処置であり、根本的な治療には受診が必要です。
市販の鎮痛剤を使う
市販の鎮痛剤(イブプロフェンやアセトアミノフェンなど)で一時的に痛みを和らげることができますが、用法・用量を守ってください。妊娠中・授乳中の方、持病や常用薬のある方は、自己判断で選ばず医師・薬剤師にご相談ください。
もともと頭痛を繰り返している方が、頭痛の薬を3か月を超えて定期的に使いすぎると、かえって頭痛が増える「薬剤の使用過多による頭痛」が起こることがあります。鎮痛剤を飲む日が続く場合は、自己判断で服用を続けず、原因の特定のため医療機関にご相談ください。
急性の歯痛や腫れがある場合は患部を冷やす
急性の歯痛や歯ぐき(歯茎)の腫れがある場合は、頬の外側から、水道水程度の冷たさで濡らしたタオルを軽く当てると、症状が和らぐことがあります。
参考:日本口腔外科学会 口腔外科相談室「あごや頬がはれてきた」
なお、顎関節や咀嚼筋の症状を伴う場合は冷却が適さないこともあるため、迷うときは歯科医院にご相談ください。
避けるべきこと
- 痛む部分を強く押す・揉む:痛みが強まることがあります
- 歯ぐきの腫れを伴う部分を温める:痛みや腫れが強く感じられることがあります
- 自己判断で抗菌薬を服用する:過去の処方の残りは適切な治療を妨げることがあります
症状が和らいでも原因は残っている可能性があるため、頭痛が繰り返す・悪化する場合は受診してください。
歯科医院での治療の流れ
歯科医院ではお口の中を詳しく診察したうえで、症状に応じてレントゲン撮影や噛み合わせ・顎関節の検査で歯や顎の状態を調べます。炎症の広がりを詳しく確認する必要があるときは、CT撮影を行うこともあります。
| 原因 | 主な治療内容 |
|---|---|
| 歯髄・根尖部の炎症 | 虫歯の深さや歯髄の状態に応じて、虫歯治療、歯の神経をできるだけ残す治療(歯髄保存療法)、根管治療などを検討 |
| 歯性上顎洞炎 | 原因となる歯を残せる場合は根管治療、歯を残すことが難しい場合は抜歯を検討。症状に応じて耳鼻咽喉科と連携 |
| 顎関節症 | 生活習慣の指導、必要に応じてマウスピース(スプリント)療法や開口訓練・ストレッチなど、手術をしない治療 |
治療の中心は原因となる歯や歯ぐきへの処置ですが、発熱や倦怠感などの全身症状を伴う場合は、状態に応じて抗菌薬による治療が必要になることもあります。
再発を防ぐケア
日常のセルフケア
- 1日2回以上の丁寧なブラッシング(適切な硬さの歯ブラシで、力を入れすぎず、歯と歯ぐきの境目を意識して)
- デンタルフロス・歯間ブラシで歯と歯の間を清掃
- フッ素配合の歯磨き粉の使用(就寝前を含め1日2回、歯磨き後のうがいは少量の水で1回が推奨されています)
歯科医院での定期ケア
- お口の状態や虫歯・歯周病リスクに応じた定期検診の受診
- 歯石除去(スケーリング)・専門的なクリーニング
よくある質問(FAQ)
Q1. 虫歯と肩こり・吐き気には関係がありますか?
肩こりには姿勢や筋肉の緊張などさまざまな原因があり、虫歯が直接引き起こすとは限りません。強い頭痛に伴って吐き気が続く場合は片頭痛など他の病気も考えられるため、医療機関へのご相談をおすすめします。
Q2. 虫歯治療をしたら頭痛が治まりました。関係があったのでしょうか?
歯髄炎や歯性上顎洞炎などが原因の頭痛は、原因の治療によって症状が改善することがあります。ただし他の原因が重なる場合は治療後も頭痛が続く可能性もあるため、その際は再度医療機関にご相談ください。
Q3. 妊娠中に虫歯による頭痛が疑われます。どうすればいいですか?
妊娠中は、つわりによる嘔吐や食生活の変化などから虫歯リスクが高まることがあります。強い頭痛や普段と違う頭痛はまずかかりつけの産科・内科に、明らかな歯痛やしみる症状がある場合は歯科医師にもご相談ください。いずれも受診の際は、妊娠週数や体調をお伝えください。
Q4. 虫歯を放置すると、頭痛だけでなく命に関わることはありますか?
虫歯そのものが直ちに命に関わることは極めてまれです。ただし、重い虫歯や歯の感染を長く放置して、細菌感染が顎や首の深い部分にまで広がると、蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの重い感染症に進むことがあります。まれに敗血症をおこして致命的となる場合があることが報告されています。
強い頭痛に加えて、発熱、顔や首の腫れ、口が開けにくい、飲み込みにくい、呼吸がしづらいといった症状がある場合は、様子を見ずに速やかに救急医療機関を受診してください。
あわせて虫歯を放置するとどうなる?もご覧ください。
湘南ライフ歯科藤沢の対応
湘南ライフ歯科藤沢では、虫歯による頭痛のご相談に対してお口の中を詳しく診察したうえで症状に応じた検査を行い、虫歯治療・歯の神経をできるだけ残す治療(歯髄保存療法)・根管治療・顎関節症への手術をしない治療まで幅広くご対応しております。
口腔外科診療にも対応しています。「歯と頭のどちらが原因かわからない」という段階でも、まずはご相談ください。
このコラムの監修者



小林 浩
Hiroshi Kobayashi
所属学会
| 日本口腔外科学会 |
| 日本口腔インプラント学会 |
認定・資格
| 歯学博士(口腔外科学専攻) |
| 日本口腔外科学会認定医 |
| 厚生労働省 歯科医師臨床研修指導医 |
| アメリカ心臓協会(AHA) BLSヘルスプロバイダー |